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ジルハーツ
「ぷはーっ!なんとか泳ぎきったぁー!!」

「一体いつになったら着くのぉ......。」

ここは紅玉台場。
延々と海を泳いでたどり着いた場所である。

疲れきった2人は疲労と海水で濡れた重い体のまま、やっとの思いで海から台場へと身体を引き上げる。

ジルハーツ
「碧甲羅さんの話だと、この波止場から船が出てるって話なんだけど......。」

ジルハーツはキョロキョロと辺りを見回す。
通行する人々へと気さくに声をかける「侍」の男が目に入った。

「侍」はひんがしの国で武術として普及しており、警備にあたる者もその技術を納めている。

楓は身体にまとわりつく海水を「うへぇ……。」としかめっ面で振り落とすようにピョンピョンと飛び跳ねているが、先に歩いていくジルハーツの後を慌てて追いかける。



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「やった! ここからクガネ行きの船が出てるんだって!」

この「侍」は旅人に声をかけ、案内をしながら不審者などがいないかのチェックを行っているようだ。
全身海水まみれの2人を最初訝しんだが、必死にクガネだの温泉だのお寿司だのを喚き散らすのを見て、ただのアホなのだろうと思ったのか、「はぁ……。」と溜息混じりに肩の力が抜け、親切にクガネまでの行き方を教えてくれた。

ジルハーツ
「やっとだー!ここまでホント遠かったわねぇ......。」



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ジルハーツ
「ここまで散々苦労したんだもの……待ってなさいよクガネ!」


「待ってなさーい! お寿司ちゃん♪」

2人は案内された船着場へと向かう。



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クガネまではここからさほど遠くないのか、小型の船に簡単な帆が張られた船だ。

2人は足取り軽く船へと歩みを進める。













ずぶ濡れのまま。









 雲一つない蒼々とした空、柔らかい日射しの中、心地よい潮風がジルハーツと楓の服を乾かす頃、大きな港が見えてきた。

シリウス大灯台の様な大きな塔の向こうには、ひんがしの国特有の意匠で煌びやかに金箔や銀箔、そして美しい朱色の漆などで装飾された「城」が見えてくる。

ジルハーツ
「こ、これが……ここが……。」


「はぅわゎゎゎ……。」

小舟が桟橋に近づくと、待ちきれないとばかりに2人は船から飛び降りた。



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ジルハーツ&楓
「ク、クガネだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」




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ジルハーツ
「さすがに大きな都市ね!」


「アレはどこにあるんだろぉ!!」

2人はすぐにでもクガネを巡りたい気持ちをグッと抑え、街の中心と思われる方向へと全速力で走り出す。



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「あっ……! この匂い!! ホラ!! おすs……。」

ジルハーツ
「楓ちゃん!! あたしたちの代名詞を忘れたらダメ! これやらないといつまでたってもこの物語は始まらないのよ! 行くわよ!!」


「あぁぁん!!」

楓はジルハーツの後を追いかけるが、指を咥えながら、何度も名残惜しそうに振り返る。

ジルハーツ
「あったよ楓ちゃん!」


「はやく、はやくぅ!」

ジルハーツ&楓
「せーの……っ!」



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ジルハーツ&楓
「カナトラやっほー!!」



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クガネ

オサード小大陸から海を隔てた、島国「ひんがしの国」の貿易港。

鎖国政策が敷かれている同国において、唯一、異国船に対して開かれた港であり、ガレマール帝国はもちろん、エオルゼア諸国に至るまで、世界各地の船が入港する。
それゆえ、煌びやかな街並みを誇る商いの街であると同時に、諜報と政治の最前線でもある。



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ジルハーツ
「カフェのテラス席もなんだか風変わりでオシャレ!」

ジルハーツと楓は、エーテライト近くで営んでいる「茶屋」で一息つくことにした。


「飲み物が緑色してる!! えっと……「お茶」って言うんだって~。
あっ! ジルちゃんの鍋の色と一緒だね♪」

ジルハーツ
「あ、あたしの調理方法は間違ってなかった……のね!?」



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「これはクガネの偉い人なのかなぁ?」

2人は茶屋の正面に見える銅像へと近寄る。

ジルハーツ
「こんな大きな像を作らせるあたり、趣味悪そうね……。」

呆れ顔で銅像を見上げるジルハーツ。


「ウルダハのゲームセンターにもこんなのあったよねぇ?」

ジルハーツ
「ああ砂蠍衆の……変態パンイチのアレね……趣味悪いわホント。」

楓はうんうんと頷くと、銅像の横を通って、賑やかな繁華街の方へと向かう。



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ジルハーツ
「お城もすごいおっきくて、圧倒されるわねぇ……。」


「グリダニアは田舎だもんね!」

朱色に美しく染められた橋から見える「クガネ城」は、先ほど船から見るよりも細部の装飾の細やかさに、2人は改めて感嘆させられた。

ジルハーツ
「クガネにホントに来ちゃったのね!」



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橋を渡りきると、正面に一際大きな建物が見える。
その建物の前では「本日の公演は~!」と声を張り上げ、チラシを配る客寄せをする者が数名いる。

チラシを手に取り立ち止まる者や、開演時間を待つ者がいる。
なかなか人気のある公演のようだ。


「なんだろこれー! みせもの……ごや?」

ジルハーツ
「ショーでもやるみたいよ?」


「コロセウムみたいなものなのかなぁ?」

ジルハーツ
「血生臭いのはヤだなぁ……。」


「なになに……「漢と漢の間には、愛という名の獣道」絶賛公演中……だってさ♪」

ジルハーツ
「……コロセウムのほうがマシだったわ……。」



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ジルハーツ
「あづいんだげど……。」

ゴォーッと熱気をまきちらしながら、炉の中で火が燃え盛っている。


「ごごでおずじはづぐっでないの……。」

ジルハーツ
「おずじはがなどごではでぎないでじょ……。」

ここじゃなかったねーと2人は顔を見合わせ、鍛冶屋を後にした。



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「ジルちゃん! いろんなお店がいっぱいだよ!」

ジルハーツ
「ここは商店街なのね。」

様々な商品が取り扱われるこの小金通りでは、食材や衣類なども取り扱われており、クガネに住む庶民が利用するため、特に人の通りが多いように見える。


「見たことないものがたくさんあるよ♪」

ジルハーツ
「……いかにグリダニアが田舎か痛感するわね。」



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ジルハーツ
「見たことない柄の織物ねぇ?」

反物屋へと顔をのぞかせるジルハーツと楓。
グリダニアでは見ることがないような色合いや柄の布がクルクルと丸められて店頭で売られている。


「りこちゃんに買って行ってあげたら喜ぶかな!」

ジルハーツ
「買って行ってあげたいけど、いろんな柄があるから……りこちゃんはどんなのが好みかしらね?」



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「見て見て! この傘可愛いよ!!」

もの珍しい物を取り扱う雑貨店に駆け寄る楓。
さっそく傘を手に取り、はしゃいでいる。

ジルハーツ
「なにこれ? 紙で出来てるの?」


「うーん……紙だけど紙じゃないような不思議な手触りだよぉ?」

ジルハーツ
「記念に買って行ってもいいかもね♪ おいくらかしら?」


「……じゅ、100,000ギルだって……。」

ジルハーツ
「さ、それはお返しして次行くわよ。」



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「ジルちゃん……。」

ジルハーツ
「なによ。」


「買って♡」

ジルハーツ
「いやいやいや……! ここに来るまでにいくら使ったと思ってるのよ!」


「えー? でもぉ……たまにお金払わずにパンとか食べられたし……残ってるんじゃなーい?」

ジルハーツ
「食べられたってよりは、「あ! こんなとこにパンがある~! 食べちゃえ~♪」って感じよね……後で請求とか逮捕状とか来ないわよね……。
でもそんな買えるような持ち合わせはないよ!」


「ぶぇー、ケチー。」

ジルハーツ
「じゃあどちらか選ばせてあげる。
お寿司を食べるか……傘を買うか……だよ!」


「お寿司!!!!」

ジルハーツ
(チョロいわねっ!)

ジルハーツは心の中でグッと拳を握り、ガッツポーズした。



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ジルハーツ
「あっちはなにかしら?」


「クガネっぽくないエオルゼア風の建物があるよー?」

ジルハーツ
「げっ! 遠目に見えたけど……帝国兵が歩いてなかった!?」


「そお? こんな戦争してない場所にいるし、ここに住んでるみたいだからきっといい人なんだよ! 遊びに行ってみよぉ♪」

ジルハーツ
「待って待って!! 帝国兵にイチャモンつけられたらなにされるかわかんないわよ!?」


「そっかなぁ??」

2人は帝国の大使館には近づかないようにこの場所を離れた。



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「わぁ! クガネ城って言うんだってさ! さっきは遠くからしか見えなかったけど、近くで見ると一層おっきく見えるね♪」

クガネ城を見上げながら楓は小躍りする。

ジルハーツ
「ウルダハ並か、それ以上よね。」

城の出入り口となる城門の前には、屈強そうな男が警備についている。


「でも中に入れてくれないよぉ。」

中へいれて欲しいとしつこく迫る楓を、門番はキッと睨みつける。

ジルハーツ
「うーん、一般人が入れるような場所ではないでしょうね……。」


「あ、私のポッケにある剣を使えば中に入れるかも?」

ジルハーツ
「なんでそうなるのよ!?こんなとこで騒動なんて起こしたらタダじゃ済まないわよ!」

おもむろにポケットに手を突っ込む楓を、慌てて制止するジルハーツ。



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「もー! 冗談だってばぁ♪」

ジルハーツ
「楓ちゃんならやりかねないから怖いのよ……。」

どっと疲れがでたのか、ハァと肩を落とすジルハーツ。


「あ、そーだ! そろそろ日が暮れるし、ご飯にしよーよ♪」

一日中街中を歩き回り、燃費の悪い楓じゃなくてもお腹が空く頃合だ。

ジルハーツ
「それもそうね♪」



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ジルハーツ
「すごい灯りが綺麗ねー♪」


「ホント広いから1日じゃ周りきれないね♪」

2人は食事をするために来た、商店街を再び歩く。
最初訪れた昼間とはことなり、東方で使用される「提灯」と呼ばれる灯りが商店の表情を変えている。

ほのかに橙色に灯された多くの光が、商店街を美しく演出された様子を見たジルハーツは少し心和む。

ジルハーツ
「街全体が宝石箱みたいにキラキラしてる♪」


「ジルちゃんが……ジルちゃんらしからぬ言動を!?」

どこかで頭を打ったのかと心配そうにジルハーツを見る。

ジルハーツ
「うっさいわね!」


「えっ??」

ブリブリと怒りながら早足でいくジルハーツを、「お腹すいてはやくご飯食べたいのかなぁ?」と楓も足を速めてジルハーツを追いかけた。



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「織物屋さんがここにもあるよー!」

ジルハーツ
「ここはさっきのところと何が違うのかしら?」

ジルハーツは昼に行った、小金通りの反物屋を思い返した。


「あっ! こっちはお店に卸す織物を出してる問屋さんなんだってぇ。」

ジルハーツ
「なるほどね。 案外りこちゃんがここにひょっこり現れたりしそうねぇ。」


「だとしたら面白いよね! りこちゃんに新しい織物で服作ってもらおかな♪」



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ジルハーツ
「陽も暮れたし、ご飯にでもしようかしらね!」


「待ってましたぁ!!」

ジルハーツ
「なんといってもお寿司よねぇ♪」


「おっすっしぃ~♪」



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「私はねぇ……この右端のやつから、左端のやつまでが大好きだよ♪」

ジルハーツ
「う、うん……全部ってことね


「あとねー、これがどれだけあっても食べられるの♪」

ジルハーツ
「はいはい、じゃあ食べましょうか!」


「隣で食べてるおじさんのお寿司いいなー。」

ジルハーツ
「え? 同じものでしょう??」


「だってほら……さっきから赤いお寿司つかみ上げて口に運んでるのに、また赤いお寿司が同じとこにあるんだよ? 永遠に食べれちゃうね♪」

ジルハーツ
「え? そんなわけ……。」

ジルハーツは呆れ顔で隣のテーブルへとチラッと視線を送る。

ジルハーツ
「ほんとだ……。」



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ジルハーツ
「あたしは……この海老が1番好きね♪」


「じゃあ他のは全部食べてあげるねぇ!」

ジルハーツ
「ちょ、ちょっと!! あたしの赤身!!」


「んー♪ ほいひー!!!」

ジルハーツ
「楓ちゃんのバカァァァ! 食いしん坊ォォォ!」

ジルハーツは慌てて残った寿司を口にほお張る。



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ジルハーツ
「お腹もご機嫌、夜もとっぷり♪ 次なる目的は……ココ!」


「なんだか奥の格子が壊れてるよ~?」

ジルハーツ
「そ♪ さっき潮風亭で噂話をこっそり聞いたのよ。」

いつになくニヤニヤ顔で語るジルハーツ。

ジルハーツ
「なんでもカゲヤマって言う悪人が「心づけ」って名目でギルをばら撒いていたらしいわ……まだいるとしたら一攫千金のチャンスじゃない!?」


「へぇ! じゃあ、もしかしてここの上って……。」

ジルハーツ
「クガネ城〜♪ 入れてもらえないなら入ってやればいいのよ!」


「ジルちゃんオノコロ島あたりからスパイごっこ楽しんでるね!」

2人を物音を立てないように、水路を進んでいく。



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ジルハーツ
「あたしってばスパイとかやらせたら完璧にこなせる天才かも♪」


「そうだね♪ 成功したことないけどね!」

ジルハーツ
「ぐっ……こ、これからよ!」


「クガネ城の中ってどうなっ……。」














「御用だ!」

赤い羽織を着た侍数名が2人を取り囲む。



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ジルハーツ
「バ、バレ……た!?」


「路地に入るところからずっと見られてたみたいだよ~?」

なにを呑気なことを!と一瞬思ったが、なんとか言い訳をしなければ……。

ジルハーツ
「いやあたしは決してそんな……ホラ、クガネに初めて来たから迷子になっちゃっ……え? 縛るの?」


「私たちどうなっちゃうのー!!」



ジルハーツ
「せ、せめて温泉入らせてぇぇぇぇぇぇ!!!」







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カナトラやっほー!!
ジルハーツです。
とうとうクガネに到着しました!
やっとまともな観光ができて楽しいです!
ですが雲行きが怪しくなりましたね…

今回は前後編の構成でお届けしていきます。
次回の更新は数日後をお待ち下さい♪


後編へつづく!!!